8月は日中の水温が30度を軽く超える日がほとんどでしたが、9月に入ってからは20度中盤まで下がりました。
夏バテ気味だったメダカたちの調子も、少しずつ上がってきている気がします。
人にとっても、メダカにとっても過ごしやすい時期になりましたね。
メダカの寄生虫(ダクチロギルス・ギロダクチルス)とパラクリア
ビオトープのメダカたちに病気が大流行
さて、今年はビオトープを増やしたり、メダカの繁殖に力を入れたりと、去年以上にメダ活に勤しんできました。しかし、春から夏にかけて大変だったのが、メダカの病気です。
現在、私は4個のトロ舟ビオトープと5個のベアタンク飼育箱でメダカを飼育しています。その中の1か所のビオトープで、メダカが立て続けに調子を崩したことがありました。
調子を崩したメダカたちの症状は大体同じで、以下のような経過をたどりました。
- ヒレが閉じたり肌ツヤが悪くなる
- だんだんと痩せていき餌を食べなくなる
- 下半身の動きが悪くなり個体によってはほとんど動かせずフニャフニャ状態になる
- 天に還る
最初に調子が悪くなったのは、元々体が弱めの子たちでした。
同じメダカでも、体が大きく餌を食べるのも上手で生命力に溢れている子もいれば、体が小さくてあまり元気がない子もいます。
雑種の子たちは比較的強い子が多いのですが、選別が甘く、インブリード(近親交配)を繰り返した改良メダカの中には、生まれつき体が弱い子もかなりいるという印象があります。
私の飼育しているメダカにも体が弱い品種がいて、定期的に体調を崩していました。しかし、いつもはヒレが少し閉じ気味になったり、餌の食いが悪くなる程度で、大事に至ることはありませんでした。
ところが今回は、自然に回復することはなく、次第に症状が悪化していきました。
痩せ細り病とカラムナリス病
餌は食べているのに全く太らず痩せていく様子から「痩せ細り病」なのかな、とか下半身が動かなくなるのは「カラムナリス病」になって筋組織が破壊されたからなのかな、などといろいろ考えましたが、結論は出ませんでした。
その名の通り、メダカが徐々に痩せ細っていき最終的には衰弱死してしまう病気。
原因は判明していないが、水質の悪化や先天性・後天性の内臓疾患、細菌や寄生虫、ストレスなど諸説ある。
治療は困難で予後は悪いが、植物プランクトンが豊富なグリーンウォーターや栄養分の多い荒木田土などの環境で飼育することで回復した事例も。
滑走細菌の一種である「フレキシバクター・カラムナリス菌」による感染症。
普段は環境水中に常在していて、水質悪化や過密飼育、過剰投餌などで魚の健康状態が悪くなった時に感染し発病させる(条件性病原菌)。
鰓や鰭などに感染し、口ぐされ病・尾ぐされ病・鰓ぐされ病・細菌性皮膚炎を引き起こす。
調子を崩したメダカたちを隔離し、薬浴や塩浴(塩水浴)を施したところ、まだ体力が残っていると思われる個体は回復しました。しかし、ガリガリに痩せ細っていた数匹は、残念ながら天に還ってしまいました。
何百匹ものメダカを飼育していても、寿命以外の理由で死んでしまうメダカを目の当たりにすると、やはり悲しい気持ちになります。
そのような状況の中、元々体の弱い個体だけでなく、健康なメダカたちにも症状が現れ始めました。
虚弱体質の個体とは異なり、急激に痩せ細ることはありませんでしたが、動きが鈍くなり、餌をあまり食べなくなりました。
その後、下半身が動かなくなりフニャフニャの状態になってしまうという点では、同じ症状を示していました。
メダカの塩浴
ただ、こちらの元々は健康だったメダカたちは隔離からの塩浴でほぼ完治しました。
カラムナリス菌は、0.5%程度までの塩水中でよく発育すると言われています。この情報を根拠に、塩浴を行うと菌が増殖し、かえって病気を悪化させてしまうと主張する人もいます。
しかし、メダカの体内塩分濃度に近い0.3~0.5%程度の塩水で塩浴を行うと、新陳代謝が促進され、内臓の負担が軽減されるという効果があるそうです。
そのため、塩浴によって体力が回復し、免疫力が向上した結果、メダカが病気に打ち勝つことができたのではないかと考えられます。
メダカなどの淡水魚は体液中の塩分濃度が飼育水よりも高いため、エラやヒレから体内に入ってきた水を常時排出し続けなければならない(浸透圧調整)。
飼育水に塩を入れ塩分濃度を高めると、体内に入ってくる水の量が減り浸透圧調整に必要なエネルギーの消費も減少、それに伴いメダカは疲れにくくなって体力が回復しやすくなる。
もちろん、塩浴はあらゆる病気に効果があるわけではありません。
そのため、病気を特定でき、薬による治療が可能な場合は、そちらを選択するのが賢明です。
例えば、カラムナリス菌による感染症の場合は、グリーンFゴールド顆粒などの薬剤が有効とされています。
水質は異常なし
カラムナリス菌は、水質が悪化すると感染しやすくなることが知られています。そのため、飼育水に問題があるのかもしれないと考え、「テトラ テスト6in1試験紙」を用いて水質を調べてみました。
しかし、結果は特に異常が見られませんでした。
試験紙を1秒間飼育水につけるだけで、ペーハー(pH)・炭酸塩硬度(KH/)・総硬度(GH)・亜硝酸塩(NO2)・硝酸塩(NO3)・塩素(Cl2)の6項目を同時に計測可能。
塩素の残留は問題外としてpHが大きく酸性orアルカリ性に傾いていないかや毒性が強い亜硝酸塩の値はチェックしておきたい。
「テトラ テスト6in1試験紙」では、アンモニアを計測することができません。しかし、ミナミヌマエビが元気にツマツマしている様子から水質に問題はないと判断しました。
➡(当ブログの記事)【メダカビオトープ】越冬明けは早めの掃除&水換えでアンモニア対策
水質に問題はなく過密飼育や過剰投餌もしていないのに病気が広まったのは、おそらく元々体の弱かった子たちが菌にやられて、そこから菌が一気に増殖して他の元気な子たちにも広まっていったんでしょうね…。
この経験から、ビオトープに入れるメダカは、健康で強い個体を選ぶことの重要性を再認識しました。
➡(当ブログの記事)ビオトープに入れるメダカは体が強くて健康な個体を選ぶのが最重要
メダカの寄生虫『ダクチロギルス』と『ギロダクチルス』
ここまでの状況説明が長くなってしまいましたが、ようやく本題に入ります。
カラムナリス病は、人間の日和見感染症に似ています。つまり、宿主が健康な時は害を及ぼさないものの、抵抗力が低下した時に病原性を発揮するのです。
メダカの抵抗力が弱くなる原因は様々。元々の虚弱体質や水質の悪化、急激な水温変化などが挙げられます。
しかし、原因のひとつとして見逃せないのが、「寄生虫」の存在です。
メダカに寄生する寄生虫として有名なのは『ダクチロギルス』と『ギロダクチルス』という2種類の吸虫。ガンダムF91に出てくるモビルスーツみたいな名前…。
ダクチロギルス(左)とギロダクチルス(右)/画像引用:山崎研究所HP
ダクチロギルス | ギロダクチルス | |
---|---|---|
大きさ | 0.8~2mm | 0.3~0.8mm |
適温 | 春~夏(高水温) | 秋~春(低水温) |
性質 | 魚体に付着して表皮の細胞や粘液を食べる | |
寿命 | 約40日(魚体から脱落すると1~数日で死亡する) | |
分類 | 扁形(へんけい)動物 プラナリアなどと同じ | |
寄生場所 | 主にエラ | 主に体表・ヒレ |
繁殖方法 | 雌雄同体 | |
卵生 | 胎生 | |
幼生は水中生活し、寄生できないと2~4日以内に死亡する | 体内に仔虫、孫虫がいるため「三代虫」と呼ばれる |
こやつらはどこからともなく現れ(水中に常在)メダカのエラや体表、ヒレなどに寄生し表皮の細胞や粘液を食べます。
寄生虫の数が少ない場合は、ほとんど症状が現れません。しかし、過密飼育や水質の悪化、越冬明けでメダカの体力が低下した時に寄生虫が大量に寄生することがあります。
環境条件によっては、寄生虫が爆発的に蔓延することもあるそうです。
寄生虫に感染したメダカの初期症状は、動きが鈍くなる、食欲がなくなる、肌のつやが悪くなるなどです。
これらの症状を放置すると、寄生された部位に応じた症状が現れます。
例えば、エラに寄生された場合は鰓ぐされ病に似た症状が出ることがあります。そして、末期になるとメダカは水面や水底で動かなくなり、やがて死んでしまうのです。
さらに厄介なのは、これらの寄生虫に体力を奪われ、免疫力が低下することで、カラムナリス病などの他の病気に二次感染しやすくなることです。
私の飼育しているメダカたちは、元々体が弱いだけではなく、寄生虫に寄生されてさらに体力を奪われ、他の病気に二次感染してしまったのかもしれません。
ダクチロギルスやギロダクチルスの駆除薬
もし私の推測が正しいなら早く退治しなくては!といろいろ調べたところ、ダクチロやギロダクには一般的な細菌の魚病薬や塩浴は効果がなく、「トリクロルホン(メトリホナート)」というイカリムシやウオジラミなどの駆除に用いる薬が効果的だということが分かりました。
しかし、このトリクロルホンという成分は、寄生虫だけでなく魚にもかなりの負担を与えます。さらに、エビや貝類に対しての毒性が強いそうです。そのため、ミナミヌマエビやヒメタニシがいる我が家のビオトープでは使用できません。
そもそも、リフィッシュ、トロピカル-N、トロピカルゴールド、マゾテン液-20%など、トリクロルホンを主成分とした薬がどこにも販売されていないのです。
廃盤になったか、新型コロナウイルスの影響で流通に問題が生じているのかもしれません。
そこで、他の選択肢を求めてさらに調べを進めたところ、「プラジカンテル」という成分も寄生虫に有効であることがわかりました。
しかも、こちらの成分は魚やエビにほとんど無害で、ろ過バクテリアにも影響を与えないそうです(貝への影響は不明)。
このプラジカンテルという名前、どこかで聞いたことがあるなと思ったら、あの恐ろしい「日本住血吸虫症」の特効薬ではありませんか。
人類と日本住血吸虫の長きにわたる戦いに興味がある方は、Wikipediaの「地方病 (日本住血吸虫症)」のページを読んでみることをお勧めします。
プラジカンテルを主成分とする薬品には、ハダクリーン、ジストシド、トレマゾル、プラジプロなどがあります。
しかし、これらの薬もアマゾンや楽天市場、ヤフーショッピングなどの大手ネットショッピングモールでは販売されていませんでした。
薬機法の関係なのか流通の問題なのかは分かりませんが、日本ではペットのメダカが寄生虫に感染しても、放置するしかないようですね…。
エラ・体表ケア用配合飼料『パラクリア』
そんな絶望状態の私が最終的に辿り着いたのが表題の『パラクリア』という餌でした。
『パラクリア』はHikariブランドで有名な「キョーリン」さんが販売している”エラ・体表ケア用配合飼料”。発売日は2022年4月頃?
商品説明にはオレガノ、ガーリック、シナモン、ジンジャー、タイム、レッドペッパー、ローズマリーの7つのハーブの相互作用でエラの中からヒレ先に至るまで、体表全体の健康を維持する、と書かれていました。給餌開始から性能を発揮し始め、約3週間後には十分な効果が表れる、とも。
商品説明ページにダクチロやギロダクに効くといった具体的な説明がないのは薬機法の問題なのかもしれませんが、キョーリンのグループ会社である神畑養魚グループの共同研究施設「山崎研究所」のHPには具体的な試験結果が掲載されています。
山崎研究所は、観賞魚のエラや体表に付く寄生虫(ダクチロギルスとギロダクチルス)を駆虫するレシピの開発に成功しました。
7種類のハーブ(オレガノ、ガーリック、シナモン、ジンジャー、タイム、レッドペッパー、ローズマリー)に含まれる抗菌成分、防虫成分の一定比率の組み合わせによって生まれる相互作用による駆虫効果を発見し、成分の調合に成功しました。
試験データを見ると、このハーブ混合飼料を与えると徐々にダクチロやギロダクの寄生率が下がり始め3週間後には完全に駆除に成功。
さらにメダカとミナミヌマエビで急性・慢性毒性試験を行った結果、生存率や成長率に問題はなく安全性も高いとのこと。
これは…いいものだ。
駆除薬が買えない今、頼りになるのはこれしかないと購入を決意。
『パラクリア』の商品ラインナップ
2022年9月現在『パラクリア』の商品ラインナップは、粒度が異なるマッシュ(中心粒度0.15mm)、浮上SS(中心粒度1.7~2.0mm)、浮上M(5.0~5.5mm)という3パターンがあり、内容量はマッシュタイプが1kgと20kg、浮上SSは1.2kgと15kg、浮上Mは15kgとなっています。
画像引用:株式会社キョーリンHP
今は1kgとか1.2kgといった小パックも販売されていますが、私が最初に見た時は特大サイズ(20kg)しか売ってなかったような。
20kg(値段は2万円以上)なんて全部使い切るのに何年かかるんだろう…と途方に暮れていたところ、楽天市場で小分け販売をしているお店を見つけました。
※まだ新しい商品なので販売しているお店はかなり少ないです。
『パラクリア』の食いつきや粒の大きさ
早速300g800円くらいでマッシュタイプを購入。
一応計ってみると348gもありました。ありがとう優しい人。
これを容器に入れて…
ビオトープのメダカたちに投餌!
マッシュタイプは粉なのでこんな感じでブワーと水面に広がります。
メダカたちの食いつきは正直あまり良くありません。嫌々とまではいかないけれど仕方ないから食うかみたいな感じ。
大人メダカたちは微妙な食いつきでしたが、稚魚メダカたちにとっては食べやすいサイズなのかパクパクとハイペースで食べてました。
大人メダカにはもう少し大きいサイズの方がいいかもと思い、今度は粒が2番目に小さい浮上SSタイプを購入することに。
今度も楽天市場で。
こちらは60gで580円(メール便送料込み)と少々高めでした。(今は一般ユーザー向けに1kg程度のがお得に売っているかも)
浮上SS(左)とマッシュ(右)の大きさ比較。浮上SSは想像より粒が大きかった。
こちらは多分金魚とか鯉用なんでしょう。
一応突いたりはしてましたがデカすぎてメダカたちは食えず。
なので、すり鉢で適当な大きさにすり潰しました。なんてめんどくさいんだ…。
浮上SSをすり潰したものをメダカに投餌。マッシュタイプよりは食いつきが良い。
メダカたちのためなら労力や面倒を厭わない!という強い意思をお持ちの方は浮上SSタイプをすり潰してあげるのがいいかもしれません。私はマッシュタイプで…。
補筆)公式からも小分けパックが発売。食べやすい顆粒タイプも
公式の商品ラインナップに購入しやすい小分けパックが加わりました。
さらに粒の大きさもマッシュタイプと浮上SSタイプの中間くらいの「顆粒」タイプが登場(粒の大きさは0.21~0.37mm)。顆粒タイプの小分けパッケージは35g、120g、900gの3種類です。値段は120gで1500円程度とややお高め。
メダカに与える場合、マッシュタイプでは細かすぎるし浮上SSタイプでは粗すぎるのでこの顆粒タイプはちょうどいいサイズだと思います。
メダカの成魚との大きさ比較は↑こんな感じ。成魚に与えるならもう少し大きめでもいいかもしれません。
メダカの稚魚との大きさ比較は↑。粒が小さめなのである程度成長した稚魚でも食べられるのはいいですね。
『パラクリア』の効果や安全性
それでは、『パラクリア』をしばらく与えてみての感想を書いてみたいと思います。
まず大前提として、メダカが『パラクリア』を食べることで効果が発揮されるので、弱りに弱って餌を食べることすらできなくなった状態ではどうすることもできません。
「治療」ではなく「予防」という感じです。
そのため、問題のビオトープの子たち以外の全てのメダカたちにも予防目的でいつもの餌と並行して『パラクリア』を与えています。※問題のビオトープには『パラクリア』のみ
商品ページの「与え方」の項に”飼料の能力を発揮させるため、本商品を100%で与えてください。”と記載されていますが、100%でなくても多少でも予防できればいいかなと思っています。
早急な効果を得るには、本品を100%で与えてください。1日に魚体重の約2%摂餌できた場合は約3週間、1%の場合は約4週間後には十分な効果が期待できます。
予防には、他のフードとの併用が可能です。本品を1日に与えるフードの1/4以上の重量となるように継続して与えてください。給餌量の目安:メダカの親10匹の体重は約7.5gです。魚体重の2%の 飼料は0.15g/日、1%は0.075g/日となります。
次は「効果」について。
2か月ほど毎日朝夕2回『パラクリア』を与えていますが、完治して戻した子たちも含めて今のところ調子が悪くなったメダカはいません。
そもそも、ダクチロやギロダクのせいではない可能性も十分ありますし、効果の検証は難しいですね。
ただ、キョーリンさんは山崎研究所で実験を行い、確実に効果があることを確認してから発売していると思うので、それを信じたいと思います。
最後に、「安全性」について触れます。
前述の通り、我が家にはメダカの他にミナミヌマエビとヒメタニシがいます。
メダカやミナミヌマエビについては、安全性試験で問題がないことが分かっているので心配はなかったのですが、ヒメタニシについては触れられていなかったので少し不安でした。
もし調子が悪そうならすぐに別の水槽に移すつもりで、毎日注意深く観察していましたが、『パラクリア』を給餌し始めてから約2か月経過しても、特に異常は見られません。
ということで、まだ確定ではありませんが、メダカやミナミヌマエビだけでなく、ヒメタニシに対しても安全性は高いのではないかと思います。
最後に
以上、今回はメダカの寄生虫・ダクチロギルスやギロダクチルス対策の餌『パラクリア』の感想を書いてみました。
現在進行形でこれらの寄生虫に悩まされている人は、なかなか入手が難しいかもしれませんが、即効性のある駆除薬を何とか探してください。
一方、駆除薬を使う状態ではないものの、予防に力を入れたい人は、『パラクリア』を試してみるのもいいかもしれません。
特に越冬明けはメダカたちの体力や抵抗力が低下し、多数の寄生虫に感染しやすい時期なので、『パラクリア』はおすすめかもしれません。
『パラクリア』の商品コンセプトは非常に良いと思うので、一般ユーザー向けにもう少し小さいサイズがどこのお店でも気軽に購入できるようになればいいですね。
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参考にさせていただいた記事・サイト